大阪高等裁判所 昭和29年(う)1245号 判決
被告人吉井政行及び島川忠正の弁護人O並に被告人山和米穀株式会社の弁護人Kの各控訴趣意の各第一、二点について。
原判決挙示の証拠ことに証人大西忠次、中村仁次の各証言及び京都食糧事務所長名義の屑米鑑定の結果についてと題する書面によれば、被告人吉井政行に対する原判示第一、第二の物件及び被告人島川忠正及び山和米穀株式会社に対する原判示第二の(4)の物件が等外玄米に該当することが明かであつて、記録を検討しても原審の右認定に誤があるとは認められない。所論は右物件は屑米であつて食糧管理法の対象となるものではないというけれども、同法第二条は「本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、大麦、麦、小麦其ノ他政令ヲ以テ定ムル食糧ヲ謂フ」と定義して、その「米穀」より屑米を除外していないのみならず、昭和二四年六月二五日法律第二一八号を以て改正即日施行された同法第三〇条の八第二項には「都道府県知事ハ必要アリト認ムルトキハ農林大臣ノ承認ヲ受ケ本法ノ規定ニ拘ラス屑又ハ砕ノ米麦等ノ管理ニ関シ特例ヲ設クルコトヲ得」と定め(ここにいわゆる米麦等とは米穀、大麦、麦、小麦、甘藷、馬鈴薯及び雑穀を指すことはその当時の同法第三条の明文によつて明かである)、同項は昭和二七年五月二九日法律第一五八号を以て第二九条第二項となつたが、右「米麦等」が「米穀」と改正されたのみで残存しているのであつて、これによれば同法第二条の「米穀」は屑米砕米等を含むものであることがいよいよ明かである。昭和二六年八月一日農林省告示第一六一号(所論昭和二七年一一月一日農林省告示第五五三号は本告示中論旨に関係のない一部分を改正する趣旨のものにすぎない)は国内産精米、外国産精米、内国産玄米の卸売業販売価格及び小売業者販売価格を指定したものにすぎず、そのうちに外国砕米についての定めすらあるのであり、また、昭和二七年政令第四〇九号は政府に売渡すべき米穀の数量の決定、生産者への数量の指示等に関するものであつて、いずれも屑米が食糧管理法による規制の対象外であるとの論拠とはしがたく、昭和二六年一二月一八日物価庁告示第一九九号(所論同日同庁告示第一九〇号はビーフン米紛等の販売価格に関するものであつて誤記と認める)がもみ、玄米及び精米につき販売価格を指定し、砕米、しいな及びくず玄米については別に同日同庁告示第二〇一号によることとしたのは、単に規定の便宜によるものであつて、これを以て前同様の論拠とすることはできない。さらに、農産物規格規程によれば国内産玄米はこれを一等乃至五等、等外及び規格外の七つの品位に区別し一等から等外までの品位に適合しない玄米を規格外としているから、かりに冒頭掲記の本件米が所論のように等外玄米に該当しないとしても、右規程にいわゆる規格外玄米に該当するものというべく、これを以て同規程にいわゆる玄米に該当しないということはできない。
所論は、さらに、本件の物件は飼料とするために売買されたものであつて食糧とする目的を以て売買されたものではないから食糧管理法の適用がないと主張するけれども、同法は米穀である限りその用途の如何を問はずその適用のあることは勿論であるのみならず、飼料とする目的で売買せられたものであることは証拠上これを認め難く、却つてこれを被告山和米穀株式会社において配給米のうちに混入して販売した事実及び本件売買格価等に徴すればむしろこれを否定するを相当とする。
これを要するに、本件の米もまた食糧管理法にいわゆる米穀に該当し本来同法による規制を受くべきものであるところ、屑米砕米等については特に同法第二九条第二項(旧第三〇条の八第二項)によつて特例を設けることができることになつており、従来昭和二五年四月一〇日附食糧庁長官通達「屑米等の処理に関する件」に基ずく屑米等処理要領によつて簡易な統制が行われていたけれども、昭和二七年九月一九日附同長官通達「屑米等の処理に関する件」によつてこれを廃止して以後、同年一二月二日附同長官通達によつて新たな統制方式が採用されるまでの間は、屑米乃至等外玄米については右の簡易な特例が認められず、すべて普通の玄米と同様な強力な統制に服していたものであることが明かである。次に、所論は被告人吉井政行及び島川忠正は右期間内は屑米乃至等外玄米については食糧管理法によるあらゆる統制が撤廃されたものであると信じていたから、同被告人等に他の行為を期待する可能性がなかつたと主張するけれども、右のような誤信はひつきよう法の不知にすぎないのみならず、右被告人等が右のように誤信していなかつたことは原判決挙示の証拠その他右被告人等の警察官及び司法警察員に対する供述調書によつてこれを推認するに足り、所論の証拠その他記録に徴しても原審の右認定に誤があるとは認められない。
(裁判長判事 荻野益三郎 判事 梶田幸治 判事 井関照夫)